少し前になりますが、どこまでが「経費」として認められるか、といった話題
がニュースやワイドショーを賑わせていました。
ところで、個人事業者と法人とでは経費として認められる範囲が違います。
これは、所得税法における「必要経費」と法人税法における「損金」の概念の違
いによるものです。近年は、会社法の施行により、最低資本金制度が撤廃され、
一人会社の設立も可能となっています。そのように、法人成りが容易となったこ
とを背景に、上記の支出の取扱いを混同しているケースも少なくないと思われま
す。
まず、今回の事務所便りでは、所得税法で認められる必要経費について触れた
いと思います。
必要経費に算入すべき金額については、所得税法第37条で定められています。
端的にいえば、「別段の定めがあるものを除き、収入を得るために直接に要した
費用」と解釈できる内容です。ここで、「別段の定め」として挙げられているも
のは限定的です。例えば、第51条では資産損失の必要経費算入が規定されてい
ます。また、第52条では貸倒引当金、第57条では青色事業専従者給与の損金
算入が定められています。
そして、第45条では、家事関連費について規定されています。基本的に、家
事上の経費は必要経費に該当しません。ただし、その例外が政令に規定されてい
ます。特に、この点には注意が必要です。すなわち、同法施行令第96条では、
業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分できる場合
に、その明らかにできる部分については必要経費に算入できる旨が定められてい
ます。
個人の生活費やプライベートな支出が全くなければ問題ありません。しかし、
家事関連費に事業用の支出が混在する場合、その一部を必要経費に計上するとす
れば、客観的な立証が必要になります。したがって、そのような支出がある場合
には、日々の取引の記録等に基づいて、「事業用の支出」と「家事用の支出」を
はっきり分けておくことが重要です。